chapter4LastGuardianchapter4「Tactics」 レドナ(ん・・・ここらへんのはず) 神社に到着したレドナは、ニュースで放映された場所に居た。 たしかに、眼前にあるはずの魔法陣は綺麗さっぱり消えていた。 しかし、レドナの目には別のものが映った。 地面に亀裂が入っている。 レドナ(先客が壊してくれた・・・?) かがんで、その亀裂を指でなぞる。 まだ、少しぬくもりがあることから、破壊されて間もないことが分かった。 レドナ(破壊する手間が省けたのはいいが・・・・。 なんか後味わりぃな・・・) 怪しまれないように、直ぐにレドナは引き返した。 あまり長々と居て、誰かに見られたとなれば危険だ。 用件が済んだら直ぐに帰る。 優等生のような言葉だが、レドナたちにとっては、存在を守る言葉だった。 家を出てから、12分後、レドナは再び家の前に着いた。 レドナ「だいま~」 玄関を開け、中に入る。 明かりはついているが、返事が無い。 不思議に思い、レドナはそのまま居間に入った。 香奈枝「あ、暁ちゃんお帰り」 フィーノ「お疲れ様です、レドナさん!」 やっと、気づいた2人がレドナに声をかける。 レドナ「だいま。 で、2人は地図広げて何してんだ?」 見ると、サインペンで地図の所々がマークされていた。 フィーノ「さっき、レドナさんが破壊しに言ってる間、広範囲の探索魔法をかけてみたんです。 そしたら、また魔法陣がいろんな場所で反応しちゃって」 香奈枝「だから、フィーノちゃんの証言をもとに、地元の私が場所を推測してたの。 それを、これにかいてたのよ」 そういって、香奈枝がレドナに地図を渡した。 それと、フィーノが広範囲の探索魔法を使えるのには驚きだった。 しかし、まぁ無理も無い、レドナと違い魔法系の指導を受けてきているのだから。 だが、それに伴う体力消費は馬鹿にならないだろう、どこかフィーノが疲れているのはそのせいだろう。 レドナ「サンキュー、御袋、フィーノ」 こういった手助けは、レドナにとっては非常に有り難く、嬉しいことだった。 改めて地図を見ると、神社を含むマークが6個。 それぞれ、場所はバラバラ、統一性は一切見られない。 商店街のアーチ、市営アパートの公園、神下中央公園。 住宅街のガードレール、デパートの屋上、そして、神下神社。 そこで、レドナは先客について思い出した。 レドナ「あ、そういえばこのテリトリーに入ったのってフィーノ以外居るのか?」 フィーノ「えっ?いえ、私だけですけど」 いきなりなにを、と云うようにフィーノが答える。 レドナ「さっき見てきたら、魔法陣が破壊されてたから、同業者がいるのかって思ってさ」 フィーノ「そ、そうだったんですかぁ!?」 フィーノが驚きの声を上げる。 レドナ「もしかして・・・反エク・・・?」 フィーノ「そうだとしたら、少々厄介ですね・・・」 香奈枝「反エクって、あの同じガーディアンの別組織よね?」 レドナ「あぁ、奴等の目的もシュナイガーの排除だから、納得がいく」 反エクというのは、反エクステンド機関の略だ。 その名のとおり、エクステンドのやり方に不満を抱くものたちの集まり。 直接的にエクステンドを攻撃することはない。 稀に協力しては、同業者として同じくシュナイガーを討伐する。 稀にガーディアン対ガーディアンでやりあうときもある。 レドナ「いずれにせよ、明日は全て破壊しにいく。 ・・・っと、後で真と香澄にも頼んでおくか」 香奈枝「そっか、明日は暁ちゃん達の学校は午前中で終りだったわね」 先日貰ってきたプリントを見て、香奈枝が言う。 明日は、教員が研修を受けるために、学校は午前中で終る。 そのチャンスを見計らっての破壊計画だ。 レドナ「あぁ、なるべく報道される前に手を打っておきたいし」 香奈枝「そう考えると、暁ちゃんはラッキーボーイかもね、ふふっ」 可笑しそうに、香奈枝が言った。 レドナ「じゃあ、ちょっと真と香澄に連絡してくる」 微笑み混じりにそう言って、レドナは自室に戻った。 翌日。 神下中学校3年の教室で、真と香澄とレドナはいつになく真剣な表情で会議をしていた。 真「で、その魔法陣を破壊する時に、誰か来ないか見張っとけばいいんだな?」 レドナ「あぁ、大方そうなるな。 ま、それだけじゃないけど」 香澄「たしかに、ここらへんは人通りが多いからね~」 真「それを考えると、こっちの道を通っていったほうがいいぜ。 この時間帯だと、あんまり人通らないし」 住み慣れている自分の街の特徴を参考に、策を練っていく。 レドナ「じゃあ、こっちの魔法陣を後回しで、先に公園の方に行くか」 香澄「うん、それがいいと思うよ」 地図を3人で囲んで、作戦の確認をする。 意見を言い合いながら、最終的結果を出してゆく。 魔法陣と魔法陣の間の最短ルートの算出。 人通りの少ない時間帯の合わせ。 提案は真と香澄。 計算と承認はレドナという役割は、以前からずっと変わってなかった。 そして、最終結果が出たと同時に、ホームルーム開始のチャイムが鳴った。 一方、鳳覇家では。 フィーノが、香奈枝の掃除の手伝いをしていた。 香奈枝「フィーノちゃん、休んでてもいいのに」 フィーノ「い~え~、居候させていただいてるぶん頑張りますよ!」 そういって、雑巾片手に棚を拭いていった。 香奈枝「ほんと、助かるわ、ありがとね」 フィーノ「いえいえ~!」 嬉しそうに言う香奈枝に、フィーノも笑顔で答えた。 香奈枝「そういえば、私もう少ししてから仕事にいかなくちゃいけないけど・・・。 たぶん、暁ちゃんもすぐに帰ってくると思うから、すこしお留守番いいかしら? フィーノ「お任せあれ、お母様~」 胸をポンと叩き、自信満々に言う。 それを見て、香奈枝も笑顔で頷いた。 そして、一気に掃除を終らせるべく、2人は張り切った。 香奈枝「あ、それと昼食は暁ちゃんが作ってくれるから心配しなくていいわ」 PM12:35。 帰りのホームルームのチャイムが、神下中学校に響いた。 帰り支度をするレドナと香澄。 それとは、別の行動をしている真。 レドナ「真、そんな置き勉してよくばれないな」 呆れた口調でレドナが言う。 真「まぁ~な、とりあえず、先公の机の中に入れとけば、街灯下暗しで大丈夫っと!」 答えながら、真は担任の机の引き出しに教科書を入れ、閉めた。 真のこの行動は、バレるかバレないかの境界線だが、バレた例は無い。 頭脳戦というよりは、ずる賢い作戦である。 香澄「それって、灯台下暗しじゃないの?」 レドナ「それに、街灯は真下もけっこう明るいし」 真「どーでもいいじゃないかぁ!さ、帰ろうぜ」 2人の鋭い突っ込みを軽く流して、真が数冊の教科書しか入っていない鞄を肩にかける。 やれやれといった感じで、レドナと香澄も鞄をかけて、教室を出た。 レドナ「あ、そういや今日、御袋いないから昼飯俺ん家で食うか? 飯食いながら作戦立ててもいいし」 帰り道、唐突にレドナが訊ねた。 なにかとそのほうが、レドナにとっても効率がよかった。 真「お!暁の激ウマ料理食えるんなら俺行くぜ~!」 香澄「うん、私も!」 2人は嬉しそうに同意し、鳳覇家へと向かった。 そして、玄関前でレドナは酷く後悔した。 レドナ「あ!!」 真「ど、どうした暁?」 フィーノの事をすっかり忘れていた。 今更帰ってくれともいえない現状。 しかたなく、レドナは2人に打ち明けようとして、玄関のドアノブに手をかけた。 レドナ「ん?いや、なんでもない・・・・ははは」 苦笑と冷や汗をかきながら、レドナは玄関に入った。 真「おじゃま~」 香澄「おっじゃましまーす」 続いて、2人も入ってくる。 そして、居間に入っていった。 フィーノ「あ、レドナさん、お帰りなさ~い。 あら、そちらは?」 居間に入るなり、フィーノが声をかけてきた。 そして、第2文目には、やっぱりと言っていい感じで、真と香澄の正体を探りに来た。 レドナ「だいま、こっちは高田 真で、こっちが青山 香澄。 2人とも破壊作戦の協力し―――」 真「初めまして!!俺、高田 真、15歳です!!」 レドナの発言を妨げる大声で、真がフィーノに握手を求めた。 その行動を阻止したのは、香澄だった。 有無を言う前に、すぅっと手が伸び、真の制服の襟元を掴む。 香澄「ご、ごめんね、騒がしい奴で。 私、青山 香澄、よろしくね」 そのまま、首をつかまれた真を、レドナに引き渡した。 ドスン、と重い音が部屋に響き、真は沈黙した。 フィーノ「申し遅れました、フィーノ・ラライドと申します。 今はちょっとわけあって、レド・・・・・あれ?」 途中まで言いかけて、フィーノが疑問の眼差しをレドナに向けた。 フィーノ「さっき、破壊作戦の協力って言ってませんでしたっけ? ってことは、お二人もガーディアンなんですか?」 レドナ「いや、2人には世話になってるし、情報も必要だからいろいろと教えただけ。 大丈夫、2人とも信用できるし、何かあれば俺が責任取る」 フィーノは納得した様に頷いた。 それを、確認すると、レドナは鞄を放り投げて台所へとたった。 レドナ「あ、御袋からは"昼食は暁ちゃんが作ってくれるから心配しなくていいわ"って言われてるだろ?」 冷蔵庫の中身を確認しながら、レドナが尋ねた。 フィーノ「はい、一言一句違わずにそう言われました~」 レドナ「ん、了解。 じゃ、香澄も真もちょっと寛いでてくれ」 香澄が頷き、地面に倒れたままの真も起き上がって、テレビ前のソファに遠慮無く座った。 逆に2人には、鳳覇家での遠慮はマナー違反と化している。 ただ単に、この家の者は気が合うというか、堅苦しいのは嫌いな性質である。 高速で、レドナは冷蔵庫の中身を確認し、卵数個と、にんじん、グリーンピース、コーンを取り出した。 そして、別の場所からケチャップを取り出し、炊飯器の中身を確認した。 そこから、神業とも言うべき手さばきで、卵を焼いていき、野菜を切る。 調理開始6分、あっと言う間にオムライス4人前が完成した。 レドナの神業的調理法の裏には、香奈枝の仕込みがあった。 香奈枝曰く、ご飯を作ってくれる子供は頼れるしカッコいいとのことで、半ば強制的に料理を学ばされた。 要領の良いレドナはすぐに覚えこみ、いまや神業に到達するまでになった。 できたオムライスを御盆にのせ、テーブルに運んだ。 真「おぉっ、まってました!!」 香澄「ほんと、暁君って料理上手だよね~」 フィーノ「さっすがレドナさん!」 運ばれてきたオムライスを見て、口々に言う。 レドナ「べつに好きでやってるわけでもねーし、できることに越したことは無いし」 もっともの意見を言って、スプーンを4匙食器棚から取り出した。 と同時に、昨夜香奈枝とフィーノが書いてくれた魔法陣の位置付きの地図も取った。 4人で、その地図を囲む形で椅子に着く。 レ、フ、真、香「いっただきまーす」 スプーンを動かしながら、レドナは簡単に作戦内容を説明した。 レドナ「ん・・・、じゃ、最初は住宅街のガードレールと、市営アパートの公園。 飯を食い終わったらここを叩く。 飯時は外に出る奴は少ないからな」 再びスプーンを動かして、オムライスを口に運ぶ。 その間、理由付きで説明される作戦内容に3人は地図を見ながらコクンと頷いた。 レドナ「で、次は神下中央公園。 さすがに昼時、ここは痛いかもしれないが、幸い公衆トイレの裏だからバレにくいだろう。 香澄とフィーノで周辺を見張っていてほしい。 後は真と俺とが出てくれば、不自然はない」 スプーンの柄を、公園の部分を指してから、そのスプーンを左に移動させた。 3人の手はスプーンを動かしながらも、目はしっかりとレドナのスプーンの柄を追う。 レドナ「次に普通に行くと、商店街が当たるわけだが・・・。 ちょうどここに行き着く時間にはタイムセールが始まっている。 ここ1つのために、全部の計画を後倒しにすることはできないから・・・」 一度は商店街の入り口をさしたスプーンの柄が下に降下する。 すぐしたのデパートの付近で、それは止まった。 レドナ「タイムセールで客は向こうに行ってるがら空きの隙を突いて、デパートの屋上を狙う。 あそこの上は立ち入りは自由なはずだから、そこの魔法陣を破壊した後に一旦屋上に留まる」 フィーノ「え、留まってたら危ないんじゃないんですか?」 香澄「それに、タイムセールの時間は短いよ」 フィーノと香澄の意見に頷くが、再びレドナは説明を続けた。 レドナ「たしか、デパート内の100円均一には手ごろなプレートあるし。 "掃除中、立ち入り禁止"とか」 真「まさか、パクるのか?」 レドナ「ばーか、税込み105円ぐらいデパートにくれてやるよ」 冗談交じりの真の笑いながらの発言に、レドナも笑いながら答える。 そして、説明は再開された。 レドナ「で、ここでそのプレートを買って、屋上に掛ける。 そしたら、誰も入ってこないだろう。 そこで、休憩と商店街の客の引き具合を見て、フェンス上から射撃攻撃で破壊する」 真「でも、爆発音とかならないか?」 確かに、異次元の武器であっても効果音までかき消す能力は無い。 しかし、レドナはこのようなミスを落とすわけはなく、策を練っていた。 レドナ「そこで、フィーノと連携して行う。 撃ったと同時に、フィーノには氷結魔法を最小限の大きさでかけてもらう」 フィーノ「コーフィアですね、了解ですっ!」 コーフィアとは、レドナの言った氷結魔法である。 一時的に、対象とした物体を氷結させる。 無論、爆発さえも氷結させてしまえば、空気の振動を防ぐことができる。 つまり、音を遮断というまえに、発信源を黙らせるのである。 後は、氷結を解除してやれば、それにて爆発音無しの爆破は完了だ。 レドナ「ん、頼んだぞ。 それが成功したら、今日の作戦は終りってことで。 終ったら、報酬として、俺の奢りでデパートのゲーセンで遊んでいこっか」 真「おっ!ますますやる気でてきたぜ!」 レドナ「やる気の出しすぎでしくるなよ」 苦笑しながら、レドナが言って、後は食器を空にするだけの作業に移った。 簡単、上手い、絶品の料理を数分で食べ終わり、一休みしてから、真と香澄は外に出た。 自分の家から、自転車を取りに行くためである。 レドナ「あっ」 一緒に外に出たレドナが、声を上げる。 レドナ「フィーノのチャリ、無かったんだっけな・・・」 真「そっか・・・暁、ニケツすっか?」 レドナ「いや、大丈夫、俺にはもう一個"愛機"があるからな」 笑いながら、レドナが言った。 真「久々に暁の神級テクが見れるっつーわけか」 意味を理解した真もニヤリと笑い返した。 数分後、真と香澄は自分の自転車を持って、再び鳳覇へと集合した。 フィーノは、レドナの訓練と共にレドナの自転車に乗っていた。 歳も歳なので、簡単に扱えこなせるようにはなった。 さすがに、ウィリーなどという過激な技は使えないが。 来たのを確認すると、レドナは裏庭に回って、一枚の板を取ってきた。 そう、スケボーである。 レドナ「とりあえず、俺がチャリのペースにあわせるから、普通にこいでてくれ」 そういって、4つの車輪を地面にたたきつけた。 真「じゃ、いっきますか~!」 真が、ペダルに足をかけて、思いっきり踏み、加速する。 その後に、2人が続き、真の真横にレドナがついた。 真「にしても、暁がスケボー使うの、久々じゃね?」 レドナ「なーに、数週間ぐらいで鈍る腕じゃねぇよっと」 ちょうど、少しの段差を軽くヒョイと飛び越えた。 自転車では無視できる範囲だが、スケボーの車輪では痛い所。 どちらかといえば、ジャンプでかわす方が良かった。 そのまま4人は、最初の目的地、住宅街へと向かった。 To be next chapter |